東京高等裁判所 平成5年(行ケ)30号 判決 1995年7月18日
神奈川県川崎市幸区堀川町72番地
原告
株式会社 東芝
同代表者代表取締役
佐藤文夫
同訴訟代理人弁理士
佐藤強
同
外川英明
同
湯山幸夫
同
加古宗男
東京都千代田区霞が関3丁目4番3号
被告
特許庁長官 清川佑二
同指定代理人
新海岳
同
鐘尾宏紀
同
関口博
同
井上元廣
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1 当事者が求めた裁判
1 原告
「特許庁が平成4年審判第3071号事件について平成5年1月22日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決
2 被告
主文と同旨の判決
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
原告は、昭和54年3月27日に出願された昭和54年特許願第36036号の分割出願として、同62年9月12日、名称を「炊飯器」とする発明(以下「本願発明」という。)についての特許法44条1項の規定による特許出願(以下「本願」という。)をしたところ、平成3年11月6日、拒絶査定を受けたので、同4年2月27日、この拒絶査定に対する審判を請求した。
特許庁は、同請求を、平成4年審判第3071号事件として審理したが、平成5年1月22日、本件審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は、同年3月3日、原告に送達された。
2 本願発明の要旨(特許請求の範囲の記載のとおり)
電気ヒータによって加熱される釜と、この釜の外面底部の温度情報を電気信号に変換する1つの感温素子と、この感温素子で検出された温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変換する変換手段と、この変換手段により供給された温度情報に従って前記電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する制御部とを具備してなることを特徴とする炊飯器(別紙図面1参照)。
3 審決の理由の要点
(1) 本願発明の要旨は前項記載のとおりと認める。
(2) 引用例の記載
<1> 特公昭53-31429号公報(以下「引用例1」という。)には、電気ヒータによって加熱される炊飯鍋と、この炊飯鍋の底面近傍に設けられ炊飯鍋の外面底部の温度情報を電気信号に変換する1つの感温素子と、この温度情報に従って前記電気ヒータを定められた制御形態(炊飯及び保温の温度制御)に制御する制御部とを具備する電気炊飯保温器が、
<2> 特開昭53-89050号公報(以下「引用例2」という。)には、ディジタル的制御手法を前提とする、オーブン内の調理食品の温度を自動的に制御する制御装置であって、サーミスタプローブにつながれて、アナログ的温度値をマイクロプロセッサヘ送信するためのディジタル表示に変換するためのアナログーディジタル変換装置を含む制御装置が、
<3> 特開昭53-117189号公報(以下「引用例3」という。)には、ワークコイルによって加熱される鍋と、鍋の底の温度をトッププレートを介して検知して鍋の外面底部の温度情報を電気信号に変換すべくトッププレートの下面に取り付けた1つのサーミスタ(感温素子)と、このサーミスタからの信号に従って前記ワークコイルを複数の時点で予め定められた制御形態(炊飯の場合、特に図面第3図に記載の制御形態)(別紙図面2参照)に制御する制御部とを具備した調理器が、
それぞれ、記載されている。
(3) 本願発明と引用例1記載の発明との対比
<1> 引用例1記載の「炊飯鍋」及び「電気炊飯保温器」は本願発明の「釜」及び「炊飯器」に相当するから、両者は、電気ヒータによって加熱される釜と、この釜の外面底部の温度情報を電気信号に変換する1つの感温素子と、この温度情報に従って前記電気ヒータを定められた制御形態に制御する制御部とを具備する炊飯器、である点で一致し、
<2>(ⅰ) 本願発明は、感温素子で検出された温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変換する変換手段を具備しているのに対し、引用例1記載の発明は、このような変換手段を具備していない点(以下「相違点1」という。)、
(ⅱ) 電気ヒータを定められた制御形態に制御する制御部において、本願発明は、ディジタル信号に変換する変換手段により供給された温度情報に従って電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御するようにしているのに対し、引用例1記載の発明は、単に、温度情報に従って前記電気ヒータを定められた制御形態に制御するようにしているにすぎない点(以下「相違点2」という。)、
で、それぞれ相違する。
(4) 相違点についての判断
<1> 相違点1について
一般に、所望の制御を達成するための制御回路における制御手法として、アナログ的制御も、また、引用例2にも記載されているようにディジタル的制御もともに従来周知の技術事項であるばかりでなく、この引用例2に、ディジタル的制御手法による制御を前提として、サーミスタ(感温素子)で検出された温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変換する変換手段を具備して調理食品に対する温度制御をするという技術事項が実質的に記載され、そして、この技術事項が食品を調理すべく加熱するものに係る点で本願発明及び引用例1記載の発明のように加熱して炊飯動作を行なうようにするものと技術的に共通しているところがあるとともに、技術分野も共通しているということができる以上、この引用例2に記載された技術事項を引用例1記載の発明に適用することに当業者にとって格別困難性は認められないから、それ故、前記従来周知の技術事項をも考慮すれば、この引用例2に記載された技術事項を取り入れて、引用例1記載の発明の制御手法をディジタル的制御手法にするとともに、相違点1でいうところの本願発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到することができたものである。
<2> 相違点2について
引用例1においても、本願発明と同様に、温度情報に従って電気ヒータを定められた制御形態に制御することが記載されているとともに、<1>のところでいうように、変換手段により温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変換すること自体に格別なものがなく、しかも、引用例3に、鍋を加熱すべくワークコイルをサーミスタ(感温素子)からの信号に従ってワークコイルを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する制御部を具備した調理器が記載され、このワークコイルを制御することにより鍋に加熱状況が制御されることからして結果的にはこのワークコイルは電気ヒータに対応するものであり、また、この鍋は炊飯用にも使えるものであって本願発明及び引用例1記載の発明と共通の技術分野に位置しているといえる以上、この引用例3に記載された技術事項を引用例1記載の発明に適用することに当業者にとって格別困難性は認められないから、この技術事項を取り入れることにより相違点2でいうところの本願発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到することができたものである。
そして、本願発明の要旨とする構成によってもたらされる効果も各引用例に記載された発明から予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
(5) まとめ
したがって、本願発明は、引用例1、2、3記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることはできない。
4 審決の理由の要点の認否
(1)(本願発明の要旨)は認める。(2)(引用例の記載)中、引用例1及び2の各記載は認める。但し、引用例1に記載された発明の電気ヒータを定められた制御形態に制御する制御部は炊飯及び保温の温度制御に限定されたものである。引用例3の記載のうち、同引用例に記載された調理器は、ワークコイルによって加熱される鍋と、鍋の底の温度をトッププレートを介して検知して鍋の外面底部の温度情報を電気信号に変換すべくトッププレートの下面に取り付けた1つのサーミスタ(感温素子)を具備していることは認め、その余は否認する。(3)(本願発明と引用例1記載の発明との対比)中、本願発明と第1引用例に記載された発明との一致点のうち、引用例1記載の「炊飯鍋」が本願発明の「釜」に相当すること、両者は、電気ヒータによって加熱される釜と、この釜の外面底部の温度情報を電気信号に変換する1つの感温素子を具備する炊飯器である点で一致することは認め、その余は否認する。相違点1及び2は認める。但し、引用例1記載の発明の、温度情報に従って電気ヒータを定められた制御形態に制御する点は炊飯及び保温の温度制御の点に限定されたものである。(4)(相違点についての判断)中、「一般に…、技術分野も共通しているということができる」(甲第1号証5頁10行ないし6頁4行)ことは認め、その余は争う。(5)(まとめ)は争う。
5 審決の取消事由
(1) 相違点1の判断の誤り(取消事由1)
本願発明の「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」なる制御は、制御時点数が多く複雑な制御であるから、制御部をマイクロコンピュータによって構成する必要がある。それ故、本願発明は「感温素子で検出された温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変換する変換手段」を設け、感温素子で検出された温度情報をコンピュータ処理可能なディジタル信号に変換して、制御部をマイクロコンピュータによって構成し得るようにしているものである。
これに対して、引用例1の温度制御回路は、その炊飯及び保温動作からなる全制御をとらえてみても、ヒータ出力切替え時点が設定温度150℃到達時点である1時点のみであり、炊飯動作の途中で電気ヒータを何ら制御しておらず、炊飯及び保温の温度制御に限定された、単純な制御であり、温度情報に従って電気ヒータを定められた制御形態に制御するものではなく、マイクロコンピュータ制御技術を使う必要性を予測させるものではない。
したがって、引用例1記載の温度制御回路に代えて、引用例2記載のマイクロコンピュータ制御技術を適用することは当業者にとって容易ではない。
しかるに、審決は、本願発明と引用例1記載の発明とは、温度情報に従って前記電気ヒータを定められた制御形態に制御する制御部を具備する点で一致するとの認定における、引用例1記載の発明の「定められた制御形態に制御する」構成が炊飯及び保温の温度制御の点に限定されたものであり、本願発明の「定められた制御形態に制御する」構成とは、その技術的意義が異なることを看過した結果、相違点1について、引用例2に記載された技術事項(アナログーディジタル変換手段)を引用例1記載の発明に適用することは容易であると誤って判断した。
(2) 相違点2の判断の誤り(取消事由2)
<1> 電磁誘導加熱調理器は高周波磁界によって鉄製鍋に渦電流を生じさせて鍋自体を発熱させるものであるのに対して、電気ヒータ加熱調理器は電気ヒータ自体が発熱してその熱を鍋に伝えるものである。よって両者は利用する自然法則が全く相違するとともに、前者では高周波発振回路をはじめ、高周波関連部品及び材質から構成され、電磁誘導技術知識が要求されるのに対して、後者は高周波関連は不要であるので、両者間に技術的共通性は全くない。
したがって、審決の、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器と本願発明及び引用例1記載の電気ヒータ加熱調理器発明とは共通の技術分野に位置しているとの認定は誤りである。
<2> 審決の、引用例3には「ワークコイルを複数の時点で予め定められた制御形態(炊飯の場合、特に図面第3図に記載の制御形態)に制御する制御部」を具備した調理器が記載されているとの認定は誤りである。
本願明細書で、従来技術の課題として、炊飯動作の途中で中火、強火、弱火のように電気ヒータの発熱容量を変化させることにより美味なご飯を炊き挙げるように、複数の時点での制御を温度検出により行なうことが不可能であった点を挙げ、本願発明の目的として、電気ヒータを複数の時点で制御することを可能とする点を挙げ、実施例として、電気ヒータ8を加熱初期(米への水分吸収促進期間に相当)である炊飯動作開始から時刻t1までの間(領域A)は中発熱容量である中火の状態に制御し、温度立上がり勾配が最初に高くなる時刻t1から釜内の水がなくなるドライアップに達する時点t2までの間である期間(煮炊き期間、領域B)は大発熱容量である強火の状態に制御し、ドライアップした時点t2から炊飯完了温度である設定温度(130℃)に達する時点t3までの間(仕上げ期間、領域C)は中または小発熱容量の状態に制御し、時点t3で断電となるように制御する技術が開示され、効果として、電気ヒータを複数の時点で制御することが可能になった点を挙げている。
以上によれば、本願発明の「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」との構成における「複数の時点」とは、その一つの制御に関しての複数の時点であることが明らかである。
そして、本願発明が、炊飯器であることから保温機能を有する炊飯保温器とは異なり、保温動作はその構成要件には含まれず、本願明細書に記載された構成要件は、炊飯の開始から保温に移る前の炊飯完了までの炊飯制御に関するものである。本願明細書の実施例に関する記載においても、「時刻t1以前の中火による第1の領域A、時刻t1とt2との間の強火による第2の領域B及び時刻t2以降の中火又は弱火による第3の領域Cの三段階の予め定められた制御形態で炊飯が行われることになる。」(甲第2号証の3、6欄21行ないし26行)と記載され、しかも、炊飯終了による断電以後の動作については何も触れられていない。したがって、「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」との構成は、美味なご飯を炊き挙げるという目的に向けられた、電気ヒータの加熱量、すなわち、いわゆる火加減を炊飯動作の途中で時間の推移に従い順次調整する目的の制御であって、保温動作の制御は含まないから、電気ヒータを炊飯動作の途中の複数時点で所定の加熱量を所定態様に変化せしめることを意味するものである。
本願出願当時の電気炊飯器の技術水準は、電気ヒータが通電された後は、その通電状態がそのまま継続され炊飯終了温度に到達して初めて自動断電という制御がなされるのが一般的であって、これが電気炊飯器の基本的機能であり、この基本的機能における電気ヒータの自動断電は炊飯動作を終了させるためのみの制御であると当業者には理解されていたから、「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」という限定が付加されると、この限定事項は、そのような炊飯終了制御とは別になされる新たな制御を意味するものと当業者はとるものであって、電気ヒータを炊飯動作の途中の複数時点で所定の加熱量を所定態様に変化せしめる制御を意味するものであると理解することは必至である。
これに対して、引用例3(甲第5号証)の記載(2頁右下欄8行ないし3頁左上欄6行及び第3図)によると、炊飯動作は、ワークコイルに、炊飯開始時点t0から内容物が100℃に達するt1までの間は800Wの出力を与える制御形態とし、時点t1以降100℃を越えるt2までの間は400Wの出力を与える制御形態としている。そして保温動作は、この100℃を越える炊飯完了温度到達時点t2にて300Wの出力を与える制御形態としている。
炊飯動作とはご飯を炊き上げる動作のことであり、米が炊き上がった時点が炊飯動作完了時点である。これに対して保温動作は炊き上がったご飯を保温するための動作である。
よって、保温動作は炊飯動作とは目的を異にする独立した別個の動作であり、両動作間に一体不可分の関係はないから、引用例3記載の発明における保温動作のための電気ヒータの制御時点は炊飯動作のそれではない。
そうすると、引用例3記載の発明においては、炊飯動作期間では、ワークコイルへの出力切替えがt1でのみ行なわれるから、「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」ものではない。
被告は、引用例3記載の発明において、炊飯完了温度到達時点t2以降の暫くの期間は、温度を一定に保持するという意味での保温の状態ではなく、急上昇した温度を所定の出力(300W)で徐々に低下させていくという予め定められた制御形態が続くものであるから、時点t2以降の制御形態は、炊飯動作である「蒸らしの状態」の制御を意味すると主張するが、引用例3には蒸らし行程を指摘する記載は見当たらず、「炊飯器内の水分がなくなり、内容物(5)の温度が上昇する。この時点をt2とする。この温度の変化が温度勾配検出手段(6)にて検出され、記憶手段(10)よりの指令に基ずき、負荷(2)の出力を上述した400Wより例えば300Wに切換え、保温の状態とする。」(甲第5号証3頁左上欄1行ないし6行)との記載から、t2以降のある時点で記憶手段(10)より指令が発せられ、それによってワークコイルの400W出力動作が終了され、それから保温行程に移り、その保温行程での加熱が例えば300W出力状態でなされるという技術内容であるとして理解されるから、上記記載から300Wによる「蒸らし」動作が示唆されていると解することはできない。また、同引用例の1頁右下欄15行ないし2頁左上欄19行には、負荷制御装置の構成が説明され、2頁右下欄3行ないし8行には、シチューの保温について、「この時点t3以後にあっては制御手段(9)よりの指令に基ずき、記憶手段(8)に設定されている保温温度と温度検知手段(3)の温度とが比較手段(12)にて比較され、制御手段(9)よりの信号に基ずいて負荷(2)の出力が制御される。例えば300Wの負荷(2)がオンオフされ、ほぼ80℃に保たれる。」と記載され、さらに、2頁右下欄8行ないし10行には、カードを炊飯用のものを使用するが、負荷制御装置は、シチューの場合と同じ構成を使用することが記載されており、シチューの加熱と同一の構成を使用する炊飯に関しても、ワークコイルがオンオフされ、それによって、適切な保温温度に維持されることが推定できるから、炊飯後の300Wによる保温は保温動作以外の何ものでもないことが明らかである。
なお、300Wによる保温は例示であるから、300Wの値が不合理ならば、保温にとって適切な値に置き換えて理解すべきことは当然である。
<3> 効果の相違について
引用例1記載の発明において、電気ヒータを定められた制御形態に制御する点は、炊飯及び保温の温度制御の点に限定されたものである。
また、引用例3記載の発明では、炊飯動作での制御は、出力の大きさをt1である1時点のみで切り替え、しかもその切替え基準温度が人為的設定が不要な沸騰温度のみであるとともに、高出力から低出力に切り替えるのであるから、美味な炊飯を目的とした「予め定められた制御形態に制御する」ものではない。
これに対して、本願発明の「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」との構成によって、美味な炊飯を得ることができるという効果を奏するものである。
この効果は、「複数の時点での制御」によって制御の基準温度を水温の1つの安定値である沸騰温度ばかりでなく、変化中の温度を含む複数の異なる温度とすることができるので、例えば、本願発明の実施例にみられる水分吸収促進期間(領域A)、煮炊き期間(領域B)、仕上げ期間(領域C)のように、制御形態を様々な態様にすること、すなわち「予め定められた制御形態」とすることができるとともに、その様々な制御形態を適切に組み合せることができることによって、もたらされるものである。
したがって、本願発明の奏する効果が引用例1及び3記載の発明から全く予想できない優れたものであるにもかかわらず、審決は、本願発明の要旨とする構成によってもたらされる効果も各引用例に記載された発明から予測できる程度のものであって、格別なものとはいえないと誤って、判断した。
<4> 以上のとおり、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器の技術を引用例1記載の発明に適用することは、両者が共通の技術分野に位置していないから、当業者にとって容易ではなく、さらに、引用例3に記載された技術事項を引用例1記載の発明に適用しても、本願発明の相違点2に係る構成にはならず、本願発明の上記構成によってもたらされる効果も、引用例1及び3記載の発明から予測できる程度のものではない。したがって、審決の相違点2についての判断は誤りである。
第3 請求の原因に対する認否及び被告の反論
1 請求の原因1ないし3は認め、同5の主張は争う。審決の認定判断は正当であり、原告主張の違法はない。
2 被告の反論
(1) 取消事由1について
引用例2には、サーミスタ(感温素子)で検出された温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変更する変換手段を具備して調理食品に対する温度制御をする、という技術事項が記載されており、この技術事項が食品を加熱して、温度制御によって、調理するようにしている点で、本願発明及び引用例1記載の発明の、食品として典型的なものといえる米を加熱して、温度制御によって、炊飯動作を行なうものと技術的に共通し、技術分野を共通にしていることは明らかである。
さらに、一般に、1つの所望の制御を達成するための制御回路における制御手法として、アナログ的制御もディジタル的制御も共に従来周知の技術事項である。
したがって、引用例1記載の炊飯器の制御手法に代えて引用例2記載の技術事項を取り入れることは、当業者であれば容易である。
よって、審決の相違点1についての判断に誤りはない。
(2) 取消事由2について
<1> 審決は、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器と電気ヒータ加熱調理器(本願発明及び引用例1記載の発明の調理器)が加熱手段が同じであると認定したものではなく、「ワークコイルを制御することにより鍋に加熱状況が制御されることからして結果的にはこのワークコイルは電気ヒータに対応する」(甲第1号証7頁5行ないし7行)と認定したものであり、また、炊飯のための加熱手段として、電気ヒータ加熱式のものも電磁誘導加熱式のものも従来周知であるばかりでなく、本願発明も引用例3記載の電磁誘導加熱調理器も、ともに加熱状況を制御することにより加熱温度を制御して、両者共通する「炊飯」のための炊飯動作を行なうものである以上、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器は本願発明及び引用例1記載の発明と共通の技術分野に位置しているといえることは論をまたない。
<2> 引用例3に記載されている炊飯のための制御手段は引用例3(甲第5号証)の記載(2頁右下欄8行ないし3頁左上欄6行)及び第3図の記載からみて、サーミスタからの信号(温度情報に相当)に従って、時点t1以降を800Wの出力から400Wの出力に切り換え、時点t2以降を400Wの出力から300Wの出力に切り換える出力制御をすることにより、少なくとも、時点t1以前の領域、時点t1と時点t2との間の領域、及び、時点t2以降の領域で、それぞれ、予め定められた制御形態で炊飯のための制御を行なう(なお、本願明細書においてもその記載からみて、制御形態の1つに「第1の領域A」と称して時刻t1以前の領域を含めており、この領域Aの出発点は、スタートスイッチの操作によるものであって、温度情報とは無関係である。)とともに、時点t1においてはサーミスタからの信号に従って予め定められた制御形態に制御するようにしているばかりでなく、時点t2においてもサーミスタからの信号に従って予め定められた制御形態に制御するようにしている。
したがって、審決の、引用例3には、「サーミスタからの信号に従ってワークコイルを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する制御部を具備した」調理器が記載されているとの認定に誤りはない。
原告は、引用例3記載の発明においては、時点t2以降は保温動作であるから、炊飯動作期間では、ワークコイルへの出力切替えが時点t1でのみ行なわれるから、「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」ものではないと主張する。
しかしながら、引用例3には「400Wより例えば300Wに切り換え、保温の状態とする。」と記載されているところ、温度が急上昇する時点t2で出力を下げる制御形態にしている以上、出力を下げて温度を低下させていけば、最終的には温度を一定に保持する保温のための温度制御に向かうが、時点t2以降の暫くの期間は、温度を一定に保持するという意味での保温の状態ではなく、急上昇した温度を所定の出力(300W)で徐々に低下させていくという予め定められた制御形態が続くものというべきである。そのことは、時点t2以降の温度が、第3図の図示の範囲では100℃以上であることからみて、このような100℃以上の温度で保温することは常識上考えられないことからして明らかである。したがって、時点t2以降の制御形態ば、炊飯動作である「蒸らしの状態」の制御を意味すると解するべきである。
<3> 従来の炊飯器においては、その炊飯終了時期の制御のために、一定のキュリー点温度にて磁性を失う整磁鋼のそのキュリー点温度をご飯の炊上がり温度と略等しくなるように選定して、この整磁鋼を温度検出要素とした機械的スイッチが広く使用されているところ、このような機械的スイッチを用いることによって生ずる諸種の問題点を解決するため、本願発明は、このような機械的スイッチに代えて、温度情報を電気信号に変換する1つの感温素子を具備するという構成を採用したものである。
しかるところ、引用例1記載の発明においても、機械的スイッチであるマグネットスイッチ式のものに代えて、温度情報を電気信号に変換する1つの感温素子を具備して、マグネットを温度検出要素とすることによって生ずる諸種の不都合を解決するという、本願発明と同じ諜題を有するものである。そして、本願発明の要旨とする構成によってもたらされる効果は、引用例1記載の発明に引用例2及び3に記載された技術事項を取り入れることにより当業者であれば予測できる程度のものである。
第4 証拠関係
本件記録中の書証目録の記載を引用する(書証の成立についてはすべて当事者間に争いがない。)。
理由
1(1) 請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本願発明の要旨)及び3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いはない。
(2) 審決の理由の要点中、(1)(本願発明の要旨)、(2)(引用例の記載)のうち、引用例1及び2の各記載(但し、引用例1に記載された発明の電気ヒータを定められた制御形態に制御する点の技術的意義については、原告は、炊飯及び保温の温度制御の点に限定されたものであると主張している。)、引用例3にはワークコイルによって加熱される鍋と、鍋の底の温度をトッププレートを介して検知して鍋の外面底部の温度情報を電気信号に変換すべくトッププレートの下面に取り付けた1つのサーミスタ(感温素子)を具備している調理器が記載されでいること、(3)(本願発明と引用例1記載の発明との対比)のうち、引用例1記載の「炊飯鍋」が本願発明の「釜」に相当すること、両者は、電気ヒータによって加熱される釜と、この釜の外面底部の温度情報を電気信号に変換する1つの感温素子を具備する炊飯器である点で一致すること、相違点1及び2は、当事者間に争いがない。
2 本願発明の概要
甲第2号証の3(特公平2-37763号公報、本願明細書)には、「(産業上の利用分野)本発明は、電気ヒータにより鍋を加熱して炊飯動作を行なわせるようにした炊飯器に関する。」(1欄12行ないし14行)、「(従来の技術)従来の炊飯器では、その炊飯終了時期の制御のために、温度検出要素としての整磁鋼、永久磁石、操作レバー及びマイクロスイッチ等を組合わせた機械的なスイッチ装置が広く使用されており、斯かるスイッチ装置は…一定のキュリー点温度で磁性を失う整磁鋼が伝熱的に配置され、以てその整磁鋼により被炊飯物の温度を釜の温度として検出するようになっている。この時、上記整磁鋼のキュリー点温度は、ご飯の炊上がり温度…と略等しくなるように選定されている。…以て整磁鋼の温度(検出温度)がご飯の炊上がり温度以上となってこれの磁性が消失すると、永久磁石の吸着解除にともない操作レバーが第2の位置へ復帰回動されてマイクロスイッチがオフされるため、電気ヒータが断電されて炊飯動作が終了されるようになる。」(1欄15行ないし3欄3行)、「(発明が解決しようとする問題点)…前記従来の炊飯器では炊飯動作終了時期の制御が不正確になる問題がある。又、炊飯器においては、炊飯動作の途中で所謂中火、強火、弱火のように電気ヒータの発熱容量を変化させることにより美味なご飯を炊上げることができるが、上記従来の構成ではこのような複数の時点での制御を温度検出により行なうことは不可能である。」(3欄4行ないし24行)、「本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、炊飯動作終了時期の制御を正確に行なうことが可能になるとともに、電気ヒータの複数の時点での制御が可能になり、…等の効果を奏する炊飯器を提供するにある。」(3欄29行ないし34行)、「(作用)本発明の炊飯器によれば、感温素子からの温度情報を電気信号として処理してこの電気信号に基づいて制御部により電気ヒータの複数の時点で予め定められた制御形態に制御するので、従来のような機械的スイッチは不要になる。」(4欄1行ないし6行)、「〔発明の効果〕本発明の炊飯器は…、釜の外面底部の温度情報を1つの感温素子により電気信号として検出して、この電気信号に基づいて制御部により釜を加熱する電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御するようにしたので、炊飯動作終了時期の制御を正確に行なうことが可能になるとともに、電気ヒータの複数の時点での制御が可能になり、…等の優れた効果を奏するものである。」(8欄10行ないし20行)との記載があることが認められる。
3 審決の取消事由について検討する。
(1) 取消事由1(相違点1の判断の誤り)について
一般に、所望の制御を達成するための制御回路における制御手法として、アナログ的制御も、ディジタル的制御もともに従来周知の技術事項であること、引用例2(特開昭53-89050号公報、甲第4号証)には、ディジタル的制御手法による制御を前提として、サーミスタ(感温素子)で検出された温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変換する変換手段を具備して調理食品に対する温度制御をするという技術事項が実質的に記載されていること、そして、この技術事項が食品を調理すべく加熱するものに係る点で本願発明及び引用例1記載の発明のように加熱して炊飯動作を行なうようにするものと技術的に共通しているところがあるとともに、技術分野も共通しているということができることは、当事者間に争いがない。
上記を前提にすれば、引用例1記載の発明の炊飯器のアナログ的制御に代えてディジタル的制御手法にするとともに、引用例2記載のサーミスタ(感温素子)で検出された温度情報に対応する電気信号をディジタル信号に変換する変換手段を具備して調理食品に対する温度制御をするという技術事項を適用して、本願発明の相違点1に係る構成とすることは当業者にとって容易であると認められるから、審決の相違点1についての判断に誤りはない。
原告は、引用例1の制御形態は炊飯及び保温の温度制御に限定された単純な制御であり、温度情報に従って電気ヒータを定められた制御形態に制御するものではなく、マイクロコンピュータ制御技術を使う必要性を予測させるものではないと主張する。
しかしながら、甲第6号証(コメとご飯 花谷武編著 昭和51年12月20日発行)に記載(93頁ないし97頁)されるように、炊飯動作の途中で行なう加熱制御(火加減)が水加減とともにおいしいご飯を炊き上げるための必要条件であることは本願出願遙か前から周知であったから、引用例1記載の発明における温度制御が原告主張のような単純な動作であるからといって、マイクロコンピュータ制御技術を適用してより複雑な制御をする必要性が予測できないということにはならないことは明らかである。
したがって、原告の上記主張は採用できない。
(2) 取消事由2(相違点2の判断の誤り)について
<1> 原告は、電磁誘導加熱調理器と電気ヒータ加熱調理器とは、利用する自然法則が全く相違するとともに、前者では高周波発振回路をはじめ、高周波関連部品及び材質から構成され、電磁誘導技術知識が要求されるのに対して、後者は高周波関連は不要であるので、両者間に技術的共通性は全くないから、審決の、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器と本願発明及び引用例1記載の電気ヒータ加熱調理器発明とは共通の技術分野に位置しているとの認定(甲第1号証7頁1行ないし11行)は誤りであると主張する。
しかしながら、審決は、引用例3に、鍋を加熱すべくワークコイルをサーミスタ(感温素子)からの信号に従ってワークコイルを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する制御部を具備した調理器が記載され、このワークコイルを制御することにより鍋に加熱状況が制御されることからして結果的にはこのワークコイルは電気ヒータに対応する(甲第1号証7頁1行ないし7行)と認定して、加熱方法が相違することを前提としており、加熱方法の技術的共通性によって技術分野の共通性を認定したものではない。
しかるところ、甲第5号証(特開昭53-117189号公報、引用例3)の「次に炊飯の場合を第3図の曲線を用いて説明する。」(2頁右下欄8行、9行)の記載によれば、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器は、炊飯にも用いられると認められる。
したがって、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器と本願発明及び引用例1記載の電気ヒータ炊飯器とは、いずれも、加熱状況を制御することにより加熱温度を制御して炊飯動作を行なうものである以上、引用例3記載の電磁誘導加熱調理器と本願発明及び引用例1記載の電気ヒータ炊飯器とは共通の技術分野に位置していることは当然である。
よって、原告の上記主張は採用できない。
<2> 原告は、保温動作は、炊飯動作とは目的を異にする独立した別個の動作であり、両動作間に一体不可分の関係はないから、引用例3記載の発明における保温動作のための電気ヒータの制御時点は炊飯動作のそれではなく、引用例3記載の発明においては、炊飯動作期間では、ワークコイルへの出力切換えがt1でのみ行なわれるから、「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」ものではないと主張し、被告は、時点t2以降の制御形態は、炊飯動作である「蒸らしの状態」の制御を意味すると解するべきであると主張するので、引用例3記載の発明における、時点t2以降の制御形態が、炊飯動作とは目的を異にする保温動作の制御にすぎないか、炊飯動作である「蒸らしの状態」の制御を意味するかについて検討する。
引用例3(甲第5号証)の、炊飯の場合についての「第3図の曲線(15)に示すように時点t1迄は温度の上昇が温度勾配検出手段(6)にて検出される。従ってこの温度の上昇中は負荷(2)に例えば800Wの出力が与えられる。時点t1において温度勾配がほとんど零になったことが検出されると、記憶手段(8)よりの指令に基ずいて制御手段(9)よりの信号により負荷(2)の出力が切換えられ、これに例えば400Wの出力が与えられ、この状態が保持される。そして時間が経過すると、炊飯器内の水分がなくなり、内容物の温度が上昇する。この時点をt2とする。この温度の変化が温度勾配検知手段(6)にて検知され、記憶手段(10)よりの指令に基ずき、負荷(2)の出力を上述した400Wより例えば300Wに切換え、保温の状態とする。」(2頁右下欄12行ないし3頁左上欄6行)との記載及び第3図の記載によれば、引用例3記載の調理器において、サーミスタからの信号(温度情報に相当)に従って、時点t1以降を800wの出力から400Wの出力に切り換え、時点t2以降を400Wの出力から300Wの出力に切り換える出力制御をすることにより、時点t1においてはサーミスタからの信号に従って予め定められた制御形態に制御するようにしているばかりでなく、時点t2においてもサーミスタからの信号に従って保温の状態とする動作という予め定められた制御形態に制御するようにしていると認められる。
甲第7号証(炊飯の科学 川島四郎著 昭和49年6月1日発行)の「炊飯の過程は大体次の4段階を経過するものである。<1>当初、米と水とが分離していて、釜の底からの熱の伝導で熱せられた湯が、米粒の間隙を対流して米粒の加熱が行われる時期。<2>米の澱粉が溶けてコロイド状となり、ために湯の対流が止まり同時に米粒の中の澱粉の糊化が進む時期。<3>いわゆる<蒸らす>ため、米粒間と釜底に残留する水分の蒸散、米粒の中心部への吸収と膨軟が期待される時期。<4>釜底の水分が涸れて過熱し、底一面狐色に色づいてα化が進み、更に良化して香味がつき、かくて真にうまい飯の完成する時期。以上の過程を完全に行うために、水加減、火加減の手法手段が適切に講ぜられなければならないのである。」(34頁)との記載及び「図、炊飯中の火加減(釜内の温度)」(49頁)の記載によれば、炊飯の過程中、米粒間と釜底に残留する水分の蒸散、米粒の中心部への吸収と膨軟のために<蒸らす>過程があり、<蒸らす>過程は、「火を消す」時点以降「炊き上がり」までの期間の過程であると認められる。そして、<蒸らす>過程が「炊き上がり」までの、炊飯動作に含まれることは明らかである。
次に、前記甲第7号証の「コードを差し込んでおけば、常に70℃は保たれる。」(142頁末行、143頁1行)との記載、同第6号証の「保温の目標は単にご飯を暖かく保つということのほかに、水蒸気の液化を防ぐ温度でなければならない。水蒸気の液化は内外の温度差に基づくから、ご飯の容器を高温に、少なくとも70℃以上に保てなければならない。」(98頁)との記載によれば、「炊き上がり」後の保温は70℃又はそれ以上の温度で行なわれることが認められる。もっとも、70℃以上といっても、沸騰温度に近いものではなく、70℃をはるか越えるほど高温であってはならないことは当然のことである。
しかるところ、引用例3に記載された「保温の状態とする」動作として、温度が急上昇する時点t2で出力を下げる制御形態にしている以上、出力を下げて温度を低下させていけば、最終的には温度を一定に保持する保温に適した温度に向かうが、時点t2以降の暫くの期間は、温度を一定に保持するという意味での保温の状態ではなく、急上昇した温度を所定の出力(300W)で徐々に低下させて、その期間に、米粒間と釜底に残留する水分の蒸散、米粒の中心部への吸収と膨軟をはかるという蒸らしの動作をなすものと解される。そのことは、時点t2以降の温度が、第3図の図示の範囲では100℃以上であることからみて、このような100℃以上の温度で保温することは常識上考えられないことからして明らかである。そして、前記のとおり、<蒸らす>過程が炊飯動作に含まれることは明らかである。
したがって、引用例3の調理器において、時点t2以降の制御形態における制御は、急上昇した温度を所定の出力(300W)で徐々に低下させていくという予め定められた制御であって、炊飯動作である「蒸らしの状態」の制御形態における制御を含むと解するべきである。
以上のとおり、審決の、引用例3には、「サーミスタからの信号に従ってワークコイルを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する制御部を具備した」調理器が記載されているとの認定に誤りはなく、原告の上記主張は採用できない。
<3> 原告は、本願発明の「電気ヒータを複数の時点で予め定められた制御形態に制御する」との構成によって、美味な炊飯を得ることができるという効果を奏するものであると主張するが、前記<2>のとおり、引用例3記載の調理器もまた、「サーミスタからの信号に従ってワークコイルを複
別紙図面1
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別紙図面2
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